その晩、都会の地下道の中に広がっていたのは、哲学的な意味での東洋の諦念だった。 衝撃的なその光景に、主人公が自分を映した時、感情的な喪失と同時に、生きる事の意味を失っている現代へ、世界は虚無でしかないような気がした。 一人の男性と女性像を通して、日常を描きながら、現代に潜む喪失性を浮かびあげ、現代における問題性に迫った。果たして、人間の存在そのものは、あるのだろうか。 現代は虚無をも通り越して、新しい時代に生きているのではないか。システムの中に組み込まれ、ただひたすら生きる事だけがすべてなのではないか。絶対的な価値観などはない。現代社会は、既存の救いなど求めてさえいない、今が良ければ、自分さえ生き延びられればそれで幸せ。その幸せの観念の中で生き延びるしかない。過去に希求した救いは、もう、消え去り、この現代には通用しない、そんな中の人間像を描いた、紙の棺桶。 他、二作品(仮象的な淘汰、白い花)を収録。
Book Details: |
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ISBN-13: |
978-613-8-24445-5 |
ISBN-10: |
6138244451 |
EAN: |
9786138244455 |
Book language: |
日本語 |
By (author) : |
大橋 宏 |
Number of pages: |
136 |
Published on: |
10.08.2018 |
Category: |
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