紅藻アマノリは、板ノリの原材料として日常の食生活に深く浸透している。しかし、その生物学的な理解はあまり進んでいない。最近のゲノム解析や網羅的遺伝子発現解析は遺伝子情報を潤沢なものとしているが、アマノリの生物学研究の停滞は、このような情報を十分に活用することを妨げており、そのためさらに生物学研究が進まなくなるという負のスパイラルの原因となっている。本書は、このような現状から脱却する道筋を明確にするため、日本における最近のアマノリ研究の成果を俯瞰し、それらを今後の生物学研究の進展に役立てることを目的として編集された。本書は4部構成で、第1章「アマノリの基礎知識」では、アマノリの養殖システム、味や品質の分析化学的な評価基盤、アマノリ分類の最新状況がまとめられている。第2章「生理学・分析化学から見えてくるアマノリ像」は、生理学的、分析化学的、分子生物学的、生態学的な生物学研究の成果をまとめたものであり、各総説で示されている研究の切り込み方は様々であるが、それぞれがアマノリの生物学的理解につながる多くの個性的で重要な知見となっている。第3章「分子生物学的解析技術の進歩」では、分子生物学的な研究手法に関する進捗状況がまとめられている。いずれも今後のアマノリ研究における基盤的な実験方法として定着するものである。最後の第4章「アマノリからの恩恵」では、アマノリの医療、試薬産業、養殖産業への有効利用の例が解説されているが、これらは人類の健康的な生活の維持に大きく貢献するものである。このように、本書では日本におけるアマノリ研究の現状の把握を可能にしており、読者には今後の進展にも興味を持っていただけるものと期待している。

Book Details:

ISBN-13:

978-613-9-41357-7

ISBN-10:

6139413575

EAN:

9786139413577

Book language:

日本語

Edited by:

三上 浩司

Number of pages:

368

Published on:

2019-05-15

Category:

Botany