宇宙推進物理学

本書は、宇宙推進物理学の全般について解説したものである。現状の推進技術として電気推進（イオンスラスタ、ホールスラスタ等）、レーザー推進、原子力推進の動作原理を含め、現在の宇宙推進ロケットの問題点を性能に基づいて説明し、これを超える新たな概念のフィールド推進理論を紹介している。場の推進(フィールド推進)の代表例として、空間の力学的構造に基づく圧力推力による空間駆動推進が導入される。宇宙船の推進力は、宇宙船周辺の時空間と宇宙船自身との相互作用により生じる場の近接作用を利用したもので、宇宙船は時空間の構造に対して推進することになる。さらに、宇宙論的観点から局所的空間の膨張による推進概念並びに場の量子論的推進原理を紹介し、量子論的推進として超弦理論による推進の可能性を示した。また、ブラックホール周辺の降着円盤の天体物理学に基づく有望な推進概念を紹介した。最後に、フィールド推進による銀河間または星間旅行の航法理論を扱う。光速の壁を迂回する方法、すなわち光の障壁をジャンプするための超空間航法理論を紹介する。光年単位の航続距離が要求される星系探査には推進理論だけでなく新規な航法理論が不可欠である。本書では時空間の物理的な構造に基づくフィールド推進理論と新しい航法理論の併用による現実的な星系探査の手段を解説する。